passages

「2001年12月28日。パリ最終日。朝からロダン美術館に行くと決めていた。
toucherすること、もっと近づいて触れること。
地獄の門、カレーの市民、そして接吻…
ナン・ゴールディンの写真とイメージが重なり、
自分がパリで見つけたこと、今回の旅で見つけたことが何であったかを確認した。
…..
写真は過ぎ去って行くものを残したいとか、
名残惜しさ…
もう来れないのだから、もっと触れなければならない。」

二十六歳のときの舌足らずな日記である。
ブレッソンのドキュメントで思い出し、パリ滞在中の写真を見返してみた。
定着液不足のためか、印画紙が黄色く変色しはじめている。
色褪せるという言葉の意味を実感した。
写真は時間とともに色褪せ、風化してゆくものなのだろう。

゛avant noir゛ という気取ったタイトルでファイルにまとめてあった。
闇に沈むまえに、というニュアンスでつけた。
(フランス語として正しいかどうかはわからない)
冬のパリは日照時間が短いから、暗くなるまえに撮らなければという焦りがあった。
実際にはブラッサイも意識してか、夜のパリもだいぶ撮っている。

暗室でのプリントに凝っている時期でもあった。
露光時に焼き込みをし過ぎているせいか、日中の写真なのに夜の雰囲気がある。
印画紙上の像が闇に沈んで消えるまえに…
そんな意味も込めて ゛avant noir゛ とつけたのだろう。